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政策と提案
2025/5/7更新
懲罰特別委員会にて日本共産党奈良市会議員団の見解
5月7日、懲罰特別委員会が開かれ、日本共産党奈良市会議員団はこの懲罰に対しての見解を発表しました。


土田議員の懲罰について

―日本共産党奈良市会議員団の見解―

2025年5月7日

はじめに
3月28日の本会議採決において自民党・無所属の会所属の北議員が、隣の席で居眠りをしていた同会派の土田議員の採決ボタンを代理で押すという、議会制民主主義の根幹にかかわるような、あってはならないことが起きました。この事態を受け、奈良市議会は3月定例会の最終日に懲罰特別委員会の設置を決定しました。奈良市議会で懲罰特別委員会が設置されるのは初めてであり、居眠りによる採決ボタンの未押下が地方議会の懲罰審査の対象となるのは全国で初めてです。

4月11日、北議員は議員辞職しました。5月7日の第3回懲罰特別委員会は土田議員に対して「陳謝」の懲罰を行うことを全会一致で決定しました。6月定例会で土田議員はこの陳謝文を読み上げることになります。これまでの経過を踏まえ、日本共産党奈良市議団の見解を述べておきます。

(1)懲罰特別委員会の設置とこれまでの経過

〇3月28日(金)17時15分から本会議再開
日程第1、日程第2の討論採決が行われた際、一番初めの採決(議案第13号、第15号、第17号、第21号、第31号で国保や介護保険の料金値上げに関する議案で日本共産党奈良市議団の6人のみが反対した議案)において北議員が、18時4分01秒、隣で居眠りをしていた土田議員の電子採決ボタンの「賛成」を押しました。
奈良市議会の議会中継映像から抽出した再開後49分0秒(18時4分)の画像の賛否画面では土田議員の表示はオレンジ色(未押下)となっていました。しかし49分01秒の画像では白色(賛成)となっていました。議長が賛否どちらかのボタンを押すように宣告したのが、再開後48分55秒だったので土田議員は少なくとも5秒間、未押下でした。

一方、市政担当記者の記事によると、北前議員とその横で居眠りをしていた土田議員の写真の撮影時刻は18時4分と表記しています。議会中継映像の時刻と完全に一致しています。

 その後簡易採決が行われ、さらにボタン採決と続くが、簡易採決が行われている時間帯に議会事務局職員が土田議員に駆け寄り、起きるよう促して採決が続けられました。

・18時33分〜休憩中

北議員が隣席の土田議員の電子採決ボタンを押したことを議員、傍聴者や市政記者が目撃し、そのことをまず議運委員長に伝え、議運委員長から議会事務局長へ、さらに事務局長から議長に当該の内容を報告しました。議長が当該会派の幹事長及び北議員に事実関係を確認したところ、北議員は当該行為の事実を認めました。

〇3月31日(月) 14時本会議 懲罰動議を議題とし、懲罰特別委員会を設置して懲罰動議を付託。議長から懲罰特別委員の指名報告が行われました
〇4月9日(水) 午後2時〜 第1回懲罰特別委員会 
正副委員長互選。共産党奈良市議団の井上議員が委員長に選出されました。
〇4月11日(金) 北議員が議員辞職願を議長に提出。議長が受理。審査対象は土田議員のみになりました。
〇4月17日(木) 10時〜 第2回懲罰特別委員会 
動議提出者(宮池議員)の趣旨説明及び質疑(桝井議員)。    土田議員を次回懲罰特別委員会に出席を求め、聞き取りを行うことを決定しました。
〇4月21日(月) 井上委員長から土田議員に文書で出席要請。しかし翌日土田議員から井上委員長に、5月7日の第3回懲罰特別委員会での聞き取り要請には応じられない旨の回答がありました。
〇5月7日(水) 午後2時〜 第3回懲罰特別委員会
土田議員に対し「陳謝」の懲罰を科すことを全会一致で決定しました。

(2)懲罰の目的、範囲と留意点
〇懲罰は議会の運営を円滑に行うため、本会議または委員会における秩序違反者に対して科す制裁です。懲罰を科す場合は本会議または委員会における秩序違反に限定しなければならず、控室や議会棟の言動は対象とはなりません。

〇地方自治法並びに会議規則に違反した議員に対し、議決により懲罰を科すことができるとあり、懲罰を科す場合は法的根拠を示さなければなりません。

〇香芝市議会での「陳謝」拒否した青木議員に「出席停止」の懲罰が違法であるとした奈良地裁・大阪高裁の判決では懲罰の一般的な原則について次のように述べています。
「市議会が懲罰の議決をする場合における懲罰事由は、懲罰動議書に記載された事由に限定される」、
「陳謝の懲罰を科す場合における陳謝の対象は、議員の言動並びにこれが議会の秩序維持及びその円滑な運営に及ぼした直接の影響に限られる」
「市議会が定める陳謝文の記載事項は、このような陳謝の対象内の事項に限定される」
留意点:懲罰動議書に記載された事由の限定されること、議会の秩序維持及びその円滑な運営に及ぼした直接の影響に限られることに留意。

(3)土田議員が懲罰にあたるかどうか

 採決時において居眠りをしていたことは地方自治法89条3項、「地方公共団体の議員は住民の負託を受け、誠実にその職務を行わなければならない」とする規定、奈良市議会会議規則第144条、「議員は議会の品位を重んじなければならない」とする規定、および同規則70条「議員は電子表決システムによる表決においては賛成のボタンまたは反対のボタンを押さなければならない」とする規定に抵触する行為であり、懲罰に相当すると考えます。

(4)懲罰に値するとすれば何が相当か
懲罰は@公開の場における戒告、A公開の場における陳謝、B一定期間の出席停止、C除名の4種類です。

「出席停止」は一定期間(7日間以内)議員としての権利を制限する懲罰であり、「除名」は議員資格をはく奪する懲罰である。「陳謝」は議員の権利制限を伴うものではありませんが、自分が作成した陳謝文ではなく、懲罰特別委員会が決定した陳謝文を議場で懲罰対象議員が読み上げることになっており、当該議員の思想信条や内心の自由との関係で、強い緊張関係をもたらすものであり、決して軽い懲罰ではありません。

「除名」の懲罰を科せられた議員は地方自治法255条の4に基づき、その処分があった日から21日以内に都道府県知事に審決の申請ができます。

「出席停止」については単なる内部規律の問題であり、審決の対象にならないとする1973年の行政実例がありましたが、2020年(令和2年)の最高裁判決で岩沼市議会議員の出席停止をめぐる判決でこの懲罰も司法審査の対象となるべきであるとされました。
「陳謝」については香芝市議会の事例でもあるように、陳謝文の読み上げを拒否したことで出席停止の懲罰を受けた場合、司法で争うことが可能となりました。懲罰の内容が理不尽な場合は違法となる可能性があります。

第2回懲罰特別委員会は土田議員に対し5月7日の第3回懲罰特別委員会に出席を求め、事情聴取に応じるよう文書で要請することを決定しました。居眠りをして採決ボタンを押さなかったのは3月28日だけなのか、体調はどうだったのか、懲罰特別委員会として調査する必要があったからです。しかし出席要請に土田氏は応じませんでした。また議会事務局に寄せられた市民の抗議も考慮し、共産党市議団は「陳謝」が妥当と考えます。

本人だけではなく自民党は会派としても党としても何もこの案件について説明しておらず、党として説明責任を果たしていないことについても指摘せざるを得ません。