2022年10月4日
日本共産党奈良市会議員団
「県域水道一体化への奈良市の不参加表明」を歓迎する
奈良県と県内27市町村で協議が進められている「県域水道一体化」について、10月4日、仲川市長は記者会見で「参加を見送る」と正式に表明しました。今年は奈良市が水道事業を開始してちょうど100年になりますが、その歴史の幕を閉じず、「水道自治」を継続する判断として歓迎するものです。
共産党市議団は、この計画の原点ともいえる「新県域水道ビジョン」が公表された時から4年間、ほぼ毎議会で取り上げ、県域水道一体化計画の問題点を指摘してきました。また、他党の質疑や奈良市が独自に設置した懇談会での議論を通じて、「広域化を否定するものではないが、今の県の案には乗れない」という合意がつくられ、今回の不参加表明につながりました。
第1に、この計画は、奈良市にとって顕著なメリットはなく、むしろ負担のほうが増大する計画であることが鮮明になりました。当初の計画ではまず経営統合し、各市町村の水道料金水準を維持しながら10年かけて料金統一を目指すとなっていました。ところが、昨年1月の覚書締結の段階では、「いきなり事業統合」「いきなり料金統一」の方針が打ち出されました。市町村間で2倍もの格差がある料金を経過措置もなくいきなり統一すれば、大きく下がるところとそうでないところが生まれ、矛盾が拡大します。また職員体制の面でも、150人いる奈良市企業局職員のうち20人程度は広域水道企業団の本部で仕事することが見込まれ、現場対応がより困難になります。
第2に、事業統合は将来の民営化に道を開くことになるのではないかとの懸念も市民の間で広がりました。一体化協議の場では議論の対象になってきませんでしたが、企業団設立後にコンセッションに進む可能性は否定できません。ヨーロッパ各国でも、大幅な事業統合後に民営化が行われました。
第3に、県と各市町村との一体化協議では経済効率に議論が集中し、水質・渇水・災害リスク軽減などの検討がおざなりになりました。とりわけこの計画が、奈良市緑ヶ丘以外の市町村浄水場を全廃し、県営の御所・桜井と合わせて3浄水場に統合するとなっていることは問題です。ため池・地下水など多様な自己水源を無くしてしまったら、災害時の対応ができるのかと市民の間で不安が広がりました。静岡市では今年9月の豪雨で、取水口に土砂や流木が詰まり断水が起きています。広域化した香川県でも、計画では浄水場を半分に減らすことになっていますが、渇水の不安があるため、削減は進んでいません。
第4に、県域水道一体化への参加の是非を判断する上で重要な財政シミュレーションでも、立場の違いが浮き彫りになりました。県は合意を得やすくするため、各市町村の計画をそのまま積み上げ、経費についても先行事例の計画段階での数値を採用しました。奈良市は現実離れした計画にならないようにするため、実績値を基本に独自の試算を行い、奈良市単独でもやっていけると判断しました。
決定打となったのが、かつてない市民の運動の広がりです。9月定例会に60人もの市民の方から「県域水道一体化」に奈良市が参加しないことを求める趣旨の陳情書が出され、同一テーマの陳情としては過去最高となりました。署名についても9月6日現在で8,334筆。「奈良市100年の水道を大切に思う100人委員会」の賛同者は200人を超えました。9月3日のシンポジウムには280人もの市民が参加しました。
共産党市議団は引き続き、「命の水を守ろう」の一点での市民の皆さんとの共同を大切にし、水道の自治を守り発展させるために力を尽くします。
以上
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