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政策と提案
2019/7/25 更新
耐震改修についての日本共産党奈良県会議員団・市会議員団の見解を記者発表

耐震改修についての日本共産党奈良県会議員団・市会議員団の見解を記者発表


市民の方々からも、要望書を市議会議員一人ひとりに手渡しで訴えに

2019年7月25日

奈良市庁舎の耐震改修問題についての見解
―荒井知事による市民不在の市庁舎移転建替え提案―


日本共産党奈良市会議員団

(1)市庁舎耐震改修問題の経過

 1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災で1981年以前の旧耐震設計基準によって建築された建物に被害が多かったことから奈良市においても法律にもとづき耐震改修計画を策定し、市有施設の耐震改修を進めてきました。特に奈良市では子どもの安全を最優先にという観点から、市庁舎に先んじて学校の耐震化に取り組んできました。その結果2018年4月1日現在の耐震化率は99.6%に達しています。共産党市議団もことあるごとに学校の耐震改修の促進などを取り上げ、防災対策の強化に取り組んできました。
 未耐震の市庁舎(築42年)について2015年に市が実施した耐震診断の結果、大地震の際、これらの建物が甚大な被害を受けるおそれがあると確認されました。
 そこで2016年に外部有識者による本庁舎耐震化整備検討委員会が設置され、2017年には基本構想が策定され、外部補強による耐震改修案が示されました。
 2018年には耐震改修工事の実施設計業務、窓口環境整備業務委託の予算が可決され、市はこれに基づき準備を進めてきました。ところが2019年6月定例会に出された市庁舎耐震改修・長寿命化の予算を全額カットする修正案が自民党から出され、賛成20、反対16の僅差で可決されました。日本共産党市議団は、市の耐震改修計画は防災拠点建築物の機能継続のためのガイドライン(既存建築物)を踏まえたものであり、計画の第三者評価も受けており、何より耐震化は急がなければならないとの立場で修正案には反対しました。

(2)荒井知事による市庁舎改修問題への異常な関与

 耐震改修工事関連の実施設計予算まで可決しているのに実際の工事予算が否決されるという前例のない事態の背景には、知事による市庁舎耐震改修問題への行き過ぎた関与があります。
知事は記者会見などで積水化学工業跡地への移転建替えに繰り返し言及し、耐震関連予算否決の流れを作りました。市民からは「まだまだ使える市役所を捨てて移転するという話を聞いて怒りがこみ上げる」「市の方針は市で決めるべき」などの声が寄せられ、知事の越権行為を批判し耐震改修を求める意見が多数です。
 知事の提案は移転先を指定し、移転建替えと耐震改修の収支比較を行い、県予算も伴う支援策にまで踏み込む内容ですが、県庁や県議会での意思決定を経た形跡がなく、私案そのものと言わなければなりません。

(3)知事案の問題点
  1. 法定耐用年数65年まで20年以上あり、奈良市が34億円かけて耐震改修と長寿命化工事をすれば30年は建替えをしなくてもよいという計画にもとづいて、実施設計予算まで確保しているのに、知事の私案で突然方針転換し、211億円もかけて移転することに市民の理解は得られないと考えます。移転に方針転換すれば、これまで耐震改修を前提として予算執行してきた実施設計業務委託費など約8千万円が全くの無駄金になります。また、奈良市で市庁舎と同程度の築年数の施設は学校など80施設ありますが、ほぼ耐震改修で対応しており、市役所のみ新築移転では市民の理解は得られません。

  2. 地方自治法が市役所の位置について
     「住民の利用に最も便利であるように、交通の事情、他の官公署との関係などについて適当な考慮を払わなければならない」と規定しているように、市庁舎にふさわしい第一の要件は「住民の利便性」です。積水跡地では新大宮駅から2キロ、徒歩で20分以上かかり、住民の利便性は大きく後退します。現市役所は新大宮駅から700メートル徒歩10分です。

  3. 知事の市庁舎移転案は県の開発構想である大宮プロジェクトに組み込まれています。
     ならまち駐車場を県が奈良市から10億円で買収しホテル事業者にあっせんする、移転後の市役所跡地については民間事業者を募集する、積水跡地の新市庁舎北側にもホテルを配置するとしています。さらに市役所移転が実現すると大宮通に2つの賑わい拠点が形成され、リニア中央新幹線の中間駅誘致にも好影響を与えるとしています。市民の利便性よりも開発優先の知事構想のもとに移転が位置付けられています。

  4. 移転のためには通常、5年程度は必要です。ところが知事案では今年の8月に検討委員会設置、10月に基本構想策定、来年3月基本計画策定、来年7月実施設計と、リニア並みの超スピードの意思決定スケジュールです。他市の移転の例ではパブリックコメントや市民アンケートをとって市民の声を計画に反映させていますが、この超過密スケジュールでは市民の声をすくいあげるいとまもありません。

  5. 知事の移転案では世界遺産の景観を損ねる可能性があります  市庁舎移転候補地である積水跡地は現在15メートルの高さ制限がありますが、知事では31メートルに緩和しようとしています。ここは世界遺産平城宮跡のハーモニーゾーンです。景観が台無しになりかねません。

(4)最後に

知事の提案は奈良市が耐震改修に向けて最終的な意思決定をしようとしているタイミングでの唐突な移転提案であり、市政に混乱をもたらしています。しかも市議会に直接問題を投げかけたことが混乱に拍車をかけています。意見があるなら執行権のある市長にまず投げかけ、協議を重ねるべきです。広域自治体の基礎自治体に対する関与は必要最小限にとどめ、自主性・自立性に配慮しなければならないというのが地方自治法の原則です。この原則に照らしても今回の知事のやりかたは不適切のそしりを免れません。日本共産党奈良県会議員団・市会議団は一刻も早い耐震化をという市民の願いに応え、市庁舎耐震化の早期実現に全力を尽くします。


以上