2015年10月9日
奈良市長
仲川 げん殿
日本共産党奈良市会議員団 団長 山口 裕司
マイナンバー制度についての申し入れ
赤ちゃんからお年寄りまで日本に住む人に一人残らず12桁の番号を割り振って国が管理する「マイナンバー(社会保障・税番号)」制度の番号通知が今月から始まります。利用開始は来年1月ですが、多くの国民は仕組みを詳しく知っている状況ではありません。国民が望んでもいない番号を“これがあなたの一生変わらない番号です”と一方的に送りつけようというやり方は、あまりに乱暴で危険です。
自治体にとっても事務量の激増と職員の負担増が重くのしかかります。東日本大震災の避難者、家庭内暴力(DV)で住民票を移さず転居中の人、特別養護老人ホーム入所者などで住所変更手続きをしていない人の手元にはそもそも通知カードは届きません。奈良市でも8千人分が郵便局から戻ってくると予想しています。「大切に扱う」ことが必要な番号を知ることすらできない人が、制度スタート段階で全国で100万人以上見込まれること自体、仕組みの矛盾とほころびを浮き彫りにするものです。制度の疑問や問い合わせへの対応、本人確認の必要な個人番号カードの交付事務など今後市民課窓口の混雑が予想されます。
自治体の経費負担も重いものがあります。初期費用だけで約3000億円も投じ、国民にも自治体・企業にも多大な負担と労力を求めるマイナンバー制度です。法定受託事務であるにも関わらず全額国から予算措置されているわけではなく、重い財政負担を強いられます。
市民にとっても情報漏えいやなりすまし被害などのリスクは格段に高まります。マイナンバーによって、現在は各機関で管理されている年金、税金、住民票などの個人情報が容易にひとつに結び付けられることになります。それで年金申請や転居のときの行政手続きが簡単になると政府は売り込みます。しかし、そんな手続きは日常生活では頻繁にありません。
むしろ個人情報を簡単に引き出せるマイナンバーを、他人に見られないようにしたり紛失しないようにしたりする手間が大変です。個人情報は分散して管理をした方がリスクは低くなるのに、マイナンバーのように「一元化」するやり方は、個人情報を格段に危険にさらす逆行でしかありません。以上の状況を踏まえ、以下の申し入れを行うものです。
記
1.マイナンバーは国民の願いから生まれたのではありません。国民の所得・資産を厳格につかみ徴税・社会保険料徴収の強化などを効率よく実施・管理したい政府と、マイナンバーをビジネスチャンスにしたい大企業の長年の要求から出発したものです。こんな狙いの制度で国民のプライバシーが侵害されていいはずがありません。来年1月の本格運用に突き進むのでなく、凍結・中止を奈良市として政府に働きかけること。
2.通知カードはもれなく市民に届けること。
3.予想される問い合わせや来庁者の激増に対して庁舎レイアウトや職員配置(正規職員の増員も含め)など万全を期し、市民サービスの低下や混乱が起きないよう対応すること
4.マイナンバー制度は法定受託事務であり、経費については全額国費で賄うよう国に働きかけ、市の負担が発生しないようにすること。国の責任でマイナンバー制の新たな事務量増大に見合う人員確保ができる予算を確保させること。
5.安易にこの制度の利用範囲を拡大しないこと
以上
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