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総合計画
2011/3/1 更新
第4次奈良市総合計画基本構想・基本計画 反対討論
日本共産党奈良市議団  井上昌弘
 私は、日本共産党奈良市会議員団を代表して、議案第1号奈良市基本構想、議案第2号奈良市基本計画について反対討論を行います。

 日本共産党奈良市会議員団は第4次総合計画の検討にあたり、計画行政の先進地である愛知県在住の自治体政策学の専門家へのヒアリング、また人口減少時代の街づくりについて奈良女子大中山徹教授へのヒアリング、さらには広く市民に呼びかけての学習会などを独自に行ってきました。

 この総合計画が何より、地方自治の本旨である住民福祉の向上につながるものになっているかどうか、また総合計画の柔軟な運用と変更手続き、財政計画や事業の優先順位など明確にされ、財政縮小、少子高齢化、人口減少という時代の特徴を踏まえたものになっているかどうかを考え方の物差しにして慎重に検討を重ねてまいりました。

 この立場で特別委員会でも積極的に発言し、ごみ減量目標の見直しなど計画に反映されたものもあります。
 しかし、認定こども園への転換政策の中止、保育士の正規職員化の促進、老春手帳優遇措置事業の充実、京奈和自動車道計画の見直し、市民本位の行財政改革のありかたなど重要な施策についての我々の修正提案は市長の提案権侵害の可能性があるとして検討の対象にさえなりませんでした。
 すべての修正提案を検討の対象にしたうえで、これを修正案として採用するかどうかは市長の判断にゆだねるべきだと思います。

以下反対の理由を述べます。
 第一の理由は、第3次総合計画の総括が不充分であり、検証なき総合計画と言わなければなりません。総合計画策定のもっとも重要なポイントは前期計画の科学的な検証と教訓の引き出しです。
 第1に総括の時期と内容が問題です。3次総計の総括が発表されたのは4次総計の当初案が示される中間段階である昨年6月です。
 この時期に3次総計の総括が出されてきても生かしようがありません。 また内容も問題です。第3次総計の各事業には達成すべき目標が明示されていないにもかかわらず、達成度が数値で評価されています。
 いきおい主観的にならざるを得ません。個別事業の個別評価の寄せ集めで、全体としてどうであったのか、何を改善し、何を引き継ぐべきか、まったく見えてきません。
 第2に第3次総計期間中の重要施策なのに総合計画には盛り込まなかったことへの反省と検証がありません。特に中核市移行は奈良市のありかたに大きな影響を及ぼすのに前期基本計画では「効率的な行財政の推進」の中の1項目に過ぎません。    市町村合併とそれに伴う300億円近い新市建設計画についてもまったく触れられておらず、後期基本計画の中で既定の事実として登場しています。またJR奈良駅西口のホテル誘致もまったく触れられていません。こうして重要施策が総合計画の中で盛りこまれず、時々の市長の思いでやられてきたことへの言及がありません。

 第3にこの総括には40万人という過大な人口目標を立て、国・県いいなりの公共事業推進、新自由主義改革路線追随の計画だったことへの反省と総括がありません。
 前期計画は、「人口減少傾向にある」という認識をもちながら、「景気はバブル崩壊後の低迷から回復の兆しがみられる」として国がアメリカと約束した630兆円の公共投資を内容とする全国総合開発計画、近畿圏の開発計画、大阪湾の臨海地域開発計画などとの「整合性をはかる」として幹線道路の建設を主軸とした近鉄奈良駅、西大寺駅、JR奈良駅周辺の整備などを掲げ、開発志向の総合計画をつくりました。
 しかしこうした計画は頓挫し、新自由主義改革をすすめた小泉内閣の登場で、国政に大きな動きが生じ、奈良市もこうした動きに合わせて行財政改革をすすめ、国保料の値上げ、シルバーパス改悪や公民館有料化、民間委託や指定管理者制度の導入、職員の削減、福祉の切捨てを進めてきました。この結果、格差と貧困の拡大、非正規労働者や職につけない人の増加など、大変な問題を引き起こしています。

 第二の理由は市民のくらしの現状認識が不十分であり、したがって対策が導き出されていないことです。いま、貧困と格差の拡大が社会問題化しています。
 派遣労働などの不安定雇用の拡大で、まじめに働いても生活保護水準の生活から抜け出せない、ワーキングプァーも増えています。また、医療・福祉の切捨てで、必要な医療や、介護が受けられない、介護・医療難民の増加も深刻です。
 こういう情勢のもとで、多くの市民が苦しんでいるだけに、市民サービスの質・量ともに、いっそう充実することが求められています。

 国保料が高くて払えない人は加入者の43%にあたる2万3000人に達しています。基本計画にはこれへの対策がありません。高すぎる国保料の引き下げを行うために、国に対しては国庫補助率の引き上げ、県に対しては5年前まであった市町村国保への財政支援の復活を求めるとともに、奈良市としてせめて中核市平均程度まで一般会計からの繰り入れを増やせば国保料の引き下げは可能です。
 介護保険制度は、重い保険料、利用料負担や施設整備の遅れなどの問題を抱えるなか、介護予防に重点がおかれましたが、必要な地域包括支援センターや、地域密着型サービス、特養ホームなどの施設整備の計画が不十分です。 また、低所得者の、保険料、利用料負担が重いために、受けたい介護サービスを我慢しています。
 必要な介護を保障するためにも、市独自の減免制度とともに高齢者の独自施策を作ることが必要です。
 障害者自立支援法による一割負担の導入では、国、県の軽減制度にとどまらず市独自の軽減制度を作ってほしいという障害者の声に応えていません。

 子育て支援として、保育料、教育費、医療費、児童扶養手当などの経済的負担の軽減で安心して、子どもを産み育てられる施策の充実が求められています。

 またこれまでの幼稚園保育園を認定こども園に転換する計画が盛り込まれていますが、これははすべきではありません。公的な保育の責任をなくせば、面積などただでさえ低い保育の基準がさらに緩和されます。

 公立保育所の民営化を中止するとともに、保育所増設や定員増、施設整備、保育士の正規職員としての採用の拡充などを計画に盛り込むべきです。

 高齢者福祉の充実を言いながら、行われているのはお年寄りいじめばかりです。シルバーパスが改悪され、バスの100円負担の導入で利用は激減し、映画の優待券が廃止された結果、37万人都市で映画館がゼロになりました。今度は入浴事業の改悪さえ検討されています。奈良市の礎を築いて来られた高齢者への施策の拡充は皆無の計画です。

第三の理由は、地域コミュニティの問題です。「地域コミュニティの活性化」を掲げながら現実に進められてきたのは連合自治会や万年青年クラブへの補助の削減、公民館の有料化などです。市自ら自治会や地区連合会など近隣コミュニティの拠点施設と位置づける11の連絡所を廃止する計画は、掲げた理念と逆行していると言わねばなりません。

第四の理由は、地域経済の活性化の問題です。国の進める地域主権改革や県の計画との整合性を図るといいますが、それでは都市部に集中的に投資が行われ、周辺部はさびれてしまいます。
 経済対策は観光に特化するのではなく、くらし、農業、中小商工業者への支援策の抜本的拡充で、自治体財政が大変な今こそ、地域経済の活性化を図らねければなりませんが、その観点が弱い計画です。

 商工サービスの項でも融資制度と後継者育成程度にとどまっています。9000人の労働生産人口を増やす計画ですが、若者の定住を促す住宅政策はなく、雇用の確保で掲げられているのは事業者への助成制度の周知、若者職業相談の充実のみです。
 面積的には奈良市域の半分を占める農林業の施策、勤労者対策・若者の就労機会の確保などは重点戦略にもマニュフエストにもありません。
 木質バイオマスや間伐材の利・活用、東部山間地域や都市部の農業の活性化、遊休地の活用、学校給食の地産地消の拡大、直売所の増設や後継者対策、お茶の価格低下対策などきめ細かな施策で、奈良市が自ら持っている内発的な経済力を引き出す計画でなければなりません。

 家庭ごみの大半を占める生ごみの資源化、事業系ごみの分別徹底などで思い切ったごみの減量化を進め、焼却炉を小型化し、地域内循環をはかる計画でなければなりません。

 これまでのような無駄の多い大型公共事業でなく、建設業を地場産業として位置づけ、歩道の整備、河川や橋梁の改修、耐震補強工事など、地域密着、くらし優先の公共工事に切り替える必要があります。

 市が発注する工事や契約などの質を確保し、発注先の労働条件を守らせるしくみとして公契約条例をつくる必要があります。

第五の理由は、まちづくりの問題です。環境を重点に掲げ、快適で暮らしやすい安全・安心の奈良市を目指すといいながら、環境・景観・文化財を壊す京奈和道の推進、リニア中央新幹線の誘致、住民不在の区画整理中心のまちづくりをこのまま続ける計画となっていることです。
 今後のまちづくりについては古都奈良の特徴を生かし、少子高齢化、人口減少時代という特徴を踏まえた街づくりの計画が必要です。

 景観の問題では奈良の最大の特徴である遠望景観・大景観を守るため、古都奈良の文化財や世界遺産、その周辺も含めた地域の保全をしなくてはなりません。
 そのための高さ規制も必要です。西九条佐保線など住民の要望を越えた幅員の広い高規格道路によるまちの分断や、土地区画整理事業の施行期間の長期化などの改善が不十分です。

第六の理由は教育の問題です。特色のある教育の推進、幼児教育・義務教育の充実といいながら、子どもたちを競争と選別にさらし、学校間格差を拡大しようとしていることです。

 国は教育基本法を改定し、愛国心を押し付け、差別選別の教育と、国家統制をいっそう強めてきました。このような国が進める教育を子どもたちに押し付けるべきではありません。
 外部評価や学校評価、教員評価、および全国一斉学力テストの実施で、先生や子どもたちを競わせるのでなく、正規の先生を増やし、30人学級の拡充など、教育環境を整備することにより、一人ひとりにたしかな学力を保障し、人間形成、人格の形成をはかることに専念すべきです。また、食育の推進を掲げながら、食育の中心である、学校給食の調理の経費削減を目的に民間営利企業に委託することは矛盾しており、直ちに見直すべきです。学校規模適正化の名のものとに幼稚園や小中学校の統廃合についても進めるとしています。子供たちの学びあい、地域の結びつきや教育力を弱めるもので、統廃合の計画は凍結し、これまでの総括を徹底して行うべきです。

第七の理由は、行財政改革の問題です。行財政改革の推進が市民の立場に立ったものとなっていないことです。
 政府が進める地方行革は、財界が求める公務の民間解放の要求に答えて、公務員を減らして、福祉や住民サービスの仕事を民間企業に譲り渡すことです。
 全国的には、民営化や民間委託で、業者の倒産、不正受給などの問題が発覚しており、結局は市民サービスの低下につながります
。  また、民間企業のノウハウの活用で、質の高いサービスが提供できると説明されていますが、競争は人件費の削減競争となり、サービス低下を必ず招きます。
 自治体のスリム化、職員の削減や民営化ではなく、市民が願う真の行財政改革、すなわち、福祉・教育の充実や、入札制度の改革、市民に親切な窓口行政の推進、そして政策評価、合意形成過程での住民参加などを進めることが必要です。
 また国や県の方針のもとに国保や消防の広域化の準備が進められていますが、いずれも市民の暮らしを守る立場から参加すべきではないと考えます。

以上で、反対討論を終わります。
 
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